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越境ECブログ

「成長を続けるマレーシアECプラットフォーマーのマーケティング戦略 ~PG Mall最高執行責任者(COO)に聞く~」を考察してみました(2)

※この文章は弊社EU担当の渡部による寄稿です。

こんにちは。ジェイグラブ EU担当の渡部です。
前回は、インタビューの前半、主にマレーシアのEC市場の特徴やECマーケットプレイスPG Mallについて紹介しました。

後半の今回は、ジェリー氏から見た日本企業との協業の可能性や、今後日本企業が越境ECビジネスに向けて取り組むべき課題をご紹介します。

※引き続き、インタビュー部分は下記リンク先から引用しています。
■JETRO 地域・分析レポート
「成長を続けるマレーシアECプラットフォーマーのマーケティング戦略 PG Mall最高執行責任者(COO)に聞く」
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2023/7d67fc8228f45203.html

ASEAN加盟国マレーシアから見た日本製品の需要度

日本企業との協業の可能性

Q. 日本製品の取り扱いはあるか?また、日本企業と協業の可能性は?

ジェリー氏:
現在、ローカル卸売業者によって日本、韓国、台湾、中国の製品が販売されている。日本製品には、家電、ヘルス&ビューティー、レトルト食品、スナック菓子などがある。日本製品の需要は高く、今後より多くの日本の小売企業の出店を呼び込みたい。人気の商品カテゴリは一般的には食料品、ヘルス&ビューティー、日用消費財だ。また最近では、キッチン用品の需要が増加している。日本製品では、マレー系の顧客が多いこともあり、ムスリムフレンドリーまたはハラル認証のある食料品や化粧品のほか、電子機器やアニメグッズの取り扱いを増やしたい。

農林水産省の報告によれば、パンデミック前の2019年までは1兆円に届かなかった農林水産物・食品の輸出額が、パンデミック後の2022年には過去最高の1兆4,148億円となり(2021年比14.3%の増加)、世界から日本の食材や食品の需要は年々増加の一途をたどっています。

キリスト教徒の推定23億8,000万人に次いで、イスラム教徒人口は2番目に大きく、約19億1,000万人以上とされています。
さらに人口研究者らからは、イスラム教徒の人口はキリスト教徒のそれにほぼ追いつくだろうと予測されています。

日本国内に目を向ければ、日本で暮らすイスラム教徒は2020年末時点で約23万人に上り、イスラム教という宗教が我々の身近な生活の中に、もうすでに十分溶け込んでいることを認識しなければなりません。

ここで個人的に注目したのは、「ムスリムフレンドリーまたはハラル認証」という文言です。
日本国内で製品を販売するにせよ、越境ECで海外へ販路を拡大するにせよ、ASEAN加盟国であるマレーシア・インドネシア・シンガポール・タイなど、その他ではトルコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などの購入者に向けてECビジネスを展開する場合は、ハラル(ハラール)認証の認識と対策は今後必要不可欠です。

マレーシアスタンダードのハラル認証(JAKIM)

ハラル認証の他に、ユダヤ教の教えに則った食べ物の定めに関する「コーシャ認証」があります。
農林水産省では、ハラル(ハラール) / コーシャに関する様々な情報を随時公開しており、また「輸出環境整備推進委託事業ハラール及びコーシャ認証制度等調査・普及成果」を毎年更新しています。

外食産業や海外でも比較的手に入れやすい日本のメーカー食品企業などは、すでにこれらハラル (ハラール)/ コーシャ認証が浸透していますが、小規模零細企業や地方の中小企業に至っては、今後も普及活動が必要と思われます。

■ハラール及びコーシャに関する情報 / 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/Halal-Kosher.html

Q. PG Mallへの出店方法は?

ジェリー氏:
出店プロセスは迅速かつ簡単だ。店舗情報、商品情報、商品写真を提出し、販売をすぐ開始することが可能。 新規販売業者には出店・販売方法のガイダンスを提供しているほか、各販売業者に専任の管理チームを割り当ててサポートを行っている。管理チームは、販売データと市場動向を分析した上で製品のラインナップや価格設定に関してアドバイスを行う。また、販売業者のプロファイルや製品の真正性を確認し、一定の基準を満たした場合にはオフィシャルストア、スーパーブランドストアなどの表示を行う。この表示システムにより、店舗の信頼性が高まり、さらなる集客・購入につながる。

PG Mallでの販売者登録は比較的簡単で、現地競合他社ShopeeやLazadaでの登録方法とさほど変わらず、また無料で登録できます。
販売者としてアカウント登録し、審査が通ればPG モールの販売者アカウントに直接ログインすることができます。

例えばShopee Malaysiaでは、マレーシアから国外へ越境EC販売をしたい場合は「Shopee International Platform (SIP)」に書類を送り、審査を受けてパスしなければなりませんが、PG Mallではこのようなシステムはなく、販売者としてのアカウントが入手できれば、越境EC販売が可能となります。

商品の一括アップロードサービスやAPIも無料で提供しており、また、出店・出品のチュートリアルをYoutubeでも配信している他、マレーシア国内で130以上のメガセミナーを開催し、全国に18のサービス支店とフォトスタジオを所有している等、販売者へのサービスも手厚いようです。

出典:PG Mall

また、PG Mallでは、Facebookマーケティング、オンラインマーケティング、オフラインマーケティングの3つのマーケティングチャネルと接続しています。

Q. 日本製品は高品質ゆえ価格競争力が低い点が課題。日本製品のプロモーションに対するアドバイスは?

ジェリー氏:
日本製品は非常に信頼性が高く長持ちし、他の製品とは一線を画している。品質、革新性、文化的魅力、強力なブランド、およびニッチ市場のターゲットの組み合わせにより、高い価格帯であっても非常に魅力的だ。
我々の顧客には価格に敏感でない消費者も多い。季節ごとのフェアなど、イベントに合わせて異なる製品を紹介するキャンペーン、バウチャーや割引などのプロモーション実施のサポートをし、日本製品の販路拡大を手伝いたい。
新型コロナウイルス感染拡大によりeコマースの需要が急増し、収束後もオンラインショッピングが消費者の習慣となったことで、マレーシアのeコマース市場の成長は続いている。こうした機会を捉え、PG Mallのように急成長する地場eコマースが生まれ、日本企業にも商機が広がりつつある。なお、同社は国内外の政府機関、電子ウォレット、物流パートナーと密に連携し、国内の販売業者のデジタル化・海外進出の支援、海外からの販売業者の誘致を進める。さらには、支払い、為替レート変動、税金、配送などの越境eコマースビジネスのカギとなるインフラの課題改善にも取り組んでいる。今後、マレーシアeコマース市場の利便性向上にも期待がかかる。

太字で示したジェリー氏の回答は、たしかにこれこそが日本製品の強みと言える部分だと、個人的に思います。
日本製品は、原材料の時点から強いこだわりで製造されているため、長く愛用できますが、なにせ値段が高いのが、越境ECでは弱点となります。
越境ECで販売するには、これにさらに送料や関税が加わるため、海外の大抵の一般購入者にとっては、時折目玉が飛び出るような価格設定になります。

しかし、いかにブランドイメージをプロモートするかによって、購入者の視点やマインドは大きく変わります。
その最たる例が、あの有名なリンゴのマークのスマートフォンではないでしょうか。
いくらニッチ層をターゲットに絞ったとしても、彼らの目にいかにスピーディーに、魅力的に届かなければ意味がありません。

eコマースの形態は、日々進化しています。
今や世界人口の半数、約40億人が持っていると言われているスマートフォンに焦点を当てたmコマース
40億人を上回り、約46億人がユーザーとなっているSNSを活用したsnsコマース
そして、ライブ配信や動画(Voice:声、Video:動画)やVRを活用したVコマースと、多岐に渡ります。

1つ前で、PG MallではFacebookマーケティングにもコネクトしていると解説しましたが、SimilarwebによるとPG Mallのソーシャル メディア トラフィックは、実はFacebookからのアクセスよりもYoutubeからのアクセス数の方が多いことがわかります。

pgmall.my へのソーシャル メディア トラフィック / 出典:Similarweb

今や世界中のECプラットフォームは、販売者の商品がいかに多くの購入者の目に留まるか重要で、様々なツールやチャネルを駆使しています。
これらのECプラットフォームを利用するのはとても便利です。
しかし、御社の商品の価値や魅力の見せ方は、御社にしかわかりません。
これらをECプラットフォームでどう見せるのか、ECプラットフォーム頼みだけではなく、自社の魅力も世界へどう発信して、いかに認知度を上げられるか、それが今後の日本の販売者の大きな課題になっています。

PG Mallについて

 企業プロフィール

(1)設立年:2017年
(2)主要商品:エレクトロニクス、ファッション、書籍、ホーム&リビング、食品&飲料、スポーツ&レジャー、キッズ&ベビー、ヘルス&ビューティー、自動車、eバウチャー
(3)売上高:非公開
(4)従業員数:約100人
(5)事業展開先:マレーシア、インドネシア、タイ
(6)企業リンク:https://pgmall.my/

《参考文献》

■JETRO 地域・分析レポート / JETRO
成長を続けるマレーシアECプラットフォーマーのマーケティング戦略 PG Mall最高執行責任者(COO)に聞く
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2023/7d67fc8228f45203.html
■Growth of Ecommerce in Malaysia: Insights for 2023 / Lizard Global
https://www.lizard.global/blog/malaysia-ecommerce-market-in-an-overview
■マレーシアのデジタル自由貿易区の設置 / 福井県立大学
https://www.fpu.ac.jp/rire/publication/column/002351.html
■データで読み解く訪日ムスリム客の動向(第38回) / Food Diversity today
https://fooddiversity.today/article_71480.html
■「2022年の農林水産物・食品の輸出実績」について / 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/kikaku/230203.html#:~:text=2022%E5%B9%B4%E3%81%AE%E8%BE%B2%E6%9E%97%E6%B0%B4%E7%94%A3%E7%89%A9%E3%83%BB%E9%A3%9F%E5%93%81%E3%81%AE%E8%BC%B8%E5%87%BA%E9%A1%8D%E3%81%AF,%E5%84%84%E5%86%86%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
■Religion by Country 2023 / World Population Review
https://worldpopulationreview.com/country-rankings/religion-by-country
■「日本人のイスラム教徒」が増える理由 国内のモスクは20年で7倍 / 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASR4X5215R2GPTIL002.html
■Guides to Join as PGmall Seller, Beginners Must Know! / Ginee
https://ginee.com/my/insights/pgmall-seller/

Writer 山田彰彦

山田 彰彦 代表取締役 越境ECコンサルタント eBay JAPAN創業メンバー、ヤフー株式会社コマース事業などを経て越境EC専門 ジェイグラブ株式会社を創業。越境EC歴24年。イーベイ・ジャパン公認コンサルタント、ジェトロ新輸出大国コンソーシアムEC専門家、中小企業庁「新しい担い手」越境EC委員も務める。

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