こんにちは。スペイン特派員の渡部です。
今回は、スペインのEC事情についてご紹介したいと思います。データは昨年のものですが、またホットなデータですので、今年、来年の進出の検討に使えると思います。皆さんの今後の海外ECビジネスに、少しでもご参考になれば幸いです。
小包は10億8,730万個、売上高は64億6,330万ユーロの増加を記録
全国市場・競争委員会(CNMC)(いわゆるスペインの公正取引委員会)は、8月9日、2021年下半期にCNMCが作成した「2021年郵便部門に関する年次報告書」を発表しました。
データによると、2021年には小包が10億8730万個、売上高64億6330万ユーロで、前年より増加しました。
好まれる小包は、2kgまでのもの(小包部門全体の7割近く)で、小包を送るために最もよく利用した物流は、Correos(コレオス:スペインの郵便局)でした。
また、小包を最も多く配達しているのはコレオスではあったものの、利用者が小包を配達する会社を選ぶことができたのは5人に1人でした。
EC取引では大量の小包が発生します。
アンケート回答者の約半数がインターネットで買い物をし、そのうちの95%近くが荷物の受け取りを伴う買い物をしています。
スペインでは近年、EC取引は増加傾向にあり、2021年最終四半期には3億3430万件の取引を達成しました。
スペイン人は食品をオンラインで購入する傾向が、イギリスの2倍、ドイツのほぼ3倍
それでは、スペインではオンラインでどのような商品が主に購入されているのでしょうか。
オンライン物流ソリューションのリーディングカンパニーであるPacklink社(本社:マドリード)が、昨年11月に興味深いアンケート結果を報告しています。
このアンケートは、「第5回Packlink eCommers Day 2021」で実施したアンケートで、スペイン、ドイツ、フランス、イタリア、イギリスの5000人を対象に行われました。
レポートによると、スペイン人の10人中8人(回答者の80%)が過去1ヵ月間にオンラインで買い物をしたと答え、半数以上(56%)がこれらの買い物に50ユーロ以上を費やしたと答えています。
「スペインの消費者は、購入する商品の中で食品カテゴリーの浸透度が他のヨーロッパ諸国と比較して際立っており、スペインの回答者の22%がこれらの商品をオンラインで購入しているのに対し、英国の消費者は11%、ドイツ人は8%。これらの数字は、スペイン人の消費習慣にeコマースが定着していることを裏付けるもの。」としています。
そう言われてみると、我が家のマンションに住む、50代以下の若い住民の方々はよく近所のスーパーで見かけるのに、ご年配の住民の方には遭遇したことが1度もありません。
同じ階に住む70代のご夫婦の奥さんにお聞きしたら、「オンラインで買って届けてもらってるのよ。」とおっしゃっていました。
たしかに、スーパーの店員さんがバンでやって来て、コンテナを運んでいる姿はちょくちょく見かけます。
しかもこの光景は、パンデミック以前から続いていた光景です。
スペインでは、ECを利用するのは若い世代に限ったことではなく、高齢者層にも広く定着しています。
パンデミックよりも前から、例えば銀行の手続きなどがスマホや自宅のパソコンで操作しなければならないシステムに切り替わっていたことから、スペインでは高齢者でもスマホをサクサク使える人が多いというのも、EC利用率の高さの表れでしょう。
十分な成長余地がある小規模店舗・個人事業主
また、Packlink社の上記のアンケートによれば、こんな興味深い結果も出ています。
「スペインでは、デジタルコマースが定着しているという良いデータがあるにもかかわらず、この調査によると、スペインはヨーロッパ人の中で最もeコマースにお金をかけない国(月100ユーロ以上をオンラインで使うのは20%)で、イギリス人(16%)をわずかに上回っている。一方、フランス(27%)、ドイツ(26%)、イタリア(25%)では、月に100ユーロ以上オンラインショッピングに費やしている。スペインで月に50ユーロ以上をオンラインショッピングに費やすのは、主に40〜50歳の男性で、ギフト、衣類、テクノロジー製品に費やす傾向がある。」
さらに、このレポートでは、スペイン人は、ブラックフライデーやクリスマス、セール期間など、大きな商業イベントの際により集中して買い物をする人たちであることも指摘されています。
スペインでは、REBAJAS(レバハス)と言って、大規模なセール期間が1年に2回あります。
毎年7月から8月にかけての夏のREBAJASと、クリスマスが終わった1月から2月にかけての冬のREBAJASです。
この時に、一斉に皆が財布の紐を緩めます。
さらに、スペイン人はオンライン購入の際に最も決定的な要因として、引き続き商品レビューを頼りにしており(46%)、商品を選ぶ際にインフルエンサーのアドバイスに従うと回答した人はわずか1%にとどまりました。
「スペイン市場において、EC取引は比較的新しい現象です。しかし、2021年はEC取引統合の年であることが確定し、すべてが景気回復の道を歩んでいることを示しています。その意味で、来年(2022年)のトレンドとして、中小企業におけるeコマースの大きな増加を感じることができます。」と、Packlink社のマーケティングディレクター、ノエリア・ラサロ氏は語っています。
引用:全国市場・競争委員会 (CNMC)
記事:La paquetería facturó 6.500 millones de euros, continuando su tendencia creciente impulsada por el comercio electrónico(小包配送売上65億円、EC取引に牽引された成長傾向が続いている)
引用:Packlink
記事:Packlink eCommerce Day 2021 Presentación de estudio Tendencias de consumo eCommerce(Packlink eCommerce Day 2021 研究発表会 eコマースの消費者トレンド)
さいごに
横川です。今月の金曜日は渡部スペイン特派員によるスペイン事情を報告していただきました。スペイン語はポルトガル語とも近く、中南米でも(多少の差はあれど)通じる言語です。そこで、そのうち中南米エリアについてもお話をお伺いできればと思っています。また、ネタをいただければ、渡辺さんの報告を掲載します。それまではしばらく、私の辛口コラムを再開します。