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越境ECブログ

アリババ(Alibaba)、テンセント(Tencent)など「悪名高い市場」リスト入り!

こんにちは。ジェイグラブの横川です。

アリババやテンセントといえば、中国を代表する巨大市場の天猫やWeChatなどを運営している企業です。もうすでに日本でも時事通信などが先週速報し、大手新聞でも記事になっていましたので、ご存知のことと思いますが、アメリカが知的財産権侵害が著しいとして、アリババやテンセントを「悪名高い市場」のリストに入れました。
参考:米、アリババやテンセントの通販サイトを「悪名高い市場」に追加(ニューズウイーク日本版)

これは、この2社「も」リスト入りしたというニュースであり、拼多多(ピンドゥオドゥオ)、淘宝網(タオバオ)などはとうの昔からリスト入りしています。これで主要な9つの中国EC市場はリスト入りしたということで、ニセモノ大国という不名誉をほしいままにしています。

当然ながらアメリカのすることには、いちいち黙っていられないのが中国でして、ちゃんと「(アメリカは)無責任だ」と異議を唱えてくれています。

China urged the United States to “objectively reflect efforts and progress made by China”, and make a fair evaluation to avoid undue negative impacts on firms, the ministry said in a statement.
(中国は米国に対し、「中国の努力と進歩を客観的に反映させ」、企業への過度の悪影響を避けるために公正な評価を行うよう促したと、同省は声明で述べている。)

China objects to U.S. inclusion of Chinese e-commerce firms in ‘notorious markets’ list (Saltwire)

ただ、この文章を読むと、異議というより「それなりに頑張ってんだからそこを評価しろ」という開き直りというか、逆ギレっぽいですね(たしかに中国政府も野放しにはしていないので、頑張っているんでしょうけど、それ以上に市井の不正行為のスピードが衰えないということなんでしょう)。

日本も大昔は欧米諸国から猿マネニッポンと揶揄されたわけですし、たしかにそんな時代もあったので、青筋立てる話ではないかもしれませんが、困ったことに日本は短期間で悪評を覆す技術大国になってしまい、さらに残念なことに、知的財産権についても欧米並みになってきてしまったので、リスト入りしたくてもなかなかハードルが高くて難しいです。それに対して世界の工場と言われ20年近く経っても評判をキープし続ける中国のパワーには脱帽せざるを得ません。

ところで、「この話は、中国人がニセモノを出しまくっていると(アメリカが言っていると)いう話であって、本物の良いものを中国に売りたいという日本人にとっては関係ない話では?」という感じもしますね。

はたしてそうでしょうか。
ニセモノの横行する市場にホンモノを出すということは、ニセモノ業者に格好の”見本”を提供しに行くようなものです(なので商標を気にする必要があるのです。特に中国は。)。

そしてなにより、中国のニセモノが中国市場だけでとどまるようなことはありえず、中国以外のECマーケットプレイスにも出品されていますし、日本のアマゾンや楽天等でも同様の事は起きているので、日本でも同じような措置をとるかもしれません(昨年、アメリカのアマゾンはそんな中国人セラーを大量に粛清しましたが)。

このブログでいつも書いているように越境ECは経済欄だけを読めば済むのではありません。国際欄(国際政治)もモロに影響するので、このニュースを見て私はこんな将来を想像しました。

アメリカが中国企業のEC市場を「悪名高いリスト」に入れたのは、知的財産権侵害など確かに問題の多い事実はあるが、政治的な対立もあって、その一環でやっている面もあるだろう。いまは、軽い言葉の応酬になっているが、この2カ国の対立が激しくなれば、もう一段踏み込んだ策に出る可能性がある。そのときには中国も強硬な報復策に出る可能性が高い。そうなるとアメリカチームの日本も何らかの対策をせざるを得ないくなるかもしれないし、ずっと安泰な市場ではないな、と。

私は、いまから10年前、2012年の尖閣諸島問題に端を発した反日暴動を忘れてはいません。問題は日中間の政治問題だったのに、最後は見事に経済問題になりました。しかもこれは「民意で起こったこと」という演出でしっかり中国政府の意を受けた形で行われていました。中国との関係は細い糸でつながっているようなもので、いつでも切れる可能性があるということです。
参考:中国で反日デモ 写真特集(時事通信、2012年)

おわりに

そこでお決まりの締めです。先週の文章を8割コピーします。

「越境ECは資産活用と同じだ」。

ある会社が伸びると予想してその会社の株を買うとします。予測通り業績を伸ばせば億万長者ですが、予測が外れて(あるいは想定外のスキャンダルなどが起きて)暴落すれば、一気に大借金王も夢ではありません。
そこで、相当なプロでもない限りは投資のプロの意見を聞き、損してもできるだけ小さくなるようにポートフォリオを組むと思います。

越境ECも同じです。いまは中国の勢いは凄まじいです。しかし、国際情勢はきな臭くなっています。政治と経済は別物と考えるのはお花畑です。昨年制定された中国の個人情報保護法には「中国に差別的な制限措置を行ったと判断した国や地域には、対抗措置を行う」と明文化されています。なにが差別になるのかがよくわからないので、気分次第で何でもできてしまいます。今回のリスト入りなんて、まさに中国から見れば「差別」だと映っても不思議ではありません。

日本はアメリカ側の国です。今後の国際情勢次第では日本も通商面で報復措置を受ける可能性はあります。
したがって、いろいろな地域に進出し、どこかの国への進出が塞がれても生き残れるようにしたほうが賢明です。

戦前の内閣総理大臣の平沼騏一郎は「欧洲の天地は複雑怪奇」と言い残しています。現代に言い換えれば「国際情勢は複雑怪奇。一夜にして状況が一変することもある」ということです。そこまで考えてはじめてリスクヘッジと言えます。

Writer 横川 広幸

横川 広幸 取締役 越境ECコンサルタント eBayJAPAN創業時に法人営業、マーケティングに従事。eBayに連携した越境ECサイト “Tokyotrad” で日本の仏具を世界86カ国に販売。自らの越境EC成功体験を越境ECアドバイザーとして日本全国でセミナー講演や個別相談を行う。

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