こんにちは。ジェイグラブの横川です。
ロシアがウクライナに侵攻して以来、西側諸国は中国の領土的野心にも警戒感を強め、第二次冷戦とすら言える国際情勢になってきています。
中国政府が公式にはっきりとロシア支持に回っているわけではありませんが、ECという側面から見ると少し風景が変わります(参考:ロシア製品を越境EC購入してロシアを支持する中国人ユーザー)。
そんなわけで対立が起きてからというもの、なかなか向こう側の情報が入ってこなくなってきていましたが、先日すこし様子のわかるニュースがありましたので紹介いたします。
ロシアのEコマースブームは中国企業にとってチャンスとOzonの中国担当者は語る
ロシアのオンラインショッピング部門の急成長により、中国企業がロシア市場で足場を固める余地は十分にあると、ロシアの電子小売業者オゾンの中国事務所の代表が述べた。
サイモン・ファンは、5月に開催された2023広東タワー・サイエンス&テクノロジー・カンファレンスで、ロシアのeコマース産業には大きな可能性があると述べました。ロシアでは買い物の約10%がオンラインで行われているのに対し、中国では約30%であるため、ロシアのEコマース市場はまだ倍増する可能性があるからです。
オゾンのオンライン決済サービスプロバイダーであるLianlian Globalのビジネス部門責任者は、同国の電子商取引総商品量は昨年2021年から30%急増し、今年は25%から30%急増する見込みであると述べた。
有利な政策に助けられ、2023年から2030年まで、中国とロシアの電子商取引は急成長する時期が続くと予想されています。
ロシアとウクライナの紛争が続いているため、欧米企業がロシアから撤退することで、中国のノートパソコンメーカー、ロボット掃除機メーカー、自動車大手などの新ブランドが隙間を埋めています。
「ロシアは比較的独立した市場であり、新しいブランドにチャンスをもたらすだろう」と、広東省南部に拠点を置く越境貿易業者のゼネラルマネージャー、ワン・ホンは言う。
より多くの中国企業がオンライン・チャネルを通じてロシア市場に参入し、その後、実店舗を構えることになるだろうとも言われている。
注目すべき企業は、ロシアにおけるオゾンの主なライバルであるワイルドベリーズと、ロシア市場への参入を準備している電子小売業者ピンドゥオドゥオの海外部門であるテム(Temu)だと言われている。
両国は陸路と海路でつながっている。中国企業はロシアに入る前に、北東部の低コストの倉庫に商品を保管することができ、モスクワに本社を置くオゾンは、チャイナ・ポスタル・エクスプレス&ロジスティクスと提携し、中国とロシアを結ぶ物流ネットワークを構築しています。
ロシアでは昨年、国境を越えた決済における中国元の利用が10倍に急増し、現在では外貨決済の4分の1を赤い紙幣(中国のお金)が占めています。また、ロシアの輸入品の約23%が人民元で支払われており、他国との人民元の使用も推進している。
参考:Russia’s E-Commerce Boom Spells Opportunity for Chinese Firms, Ozon’s China Rep Says
おわりに
ロシア市場を中国企業が席巻しているというニュースは以前からありましたが、日本ではリアル経済の話が多かったです。そして、欧米ブランドが消え、中国ブランドがやってきたが、知名度が低いのでロシア人が困惑しているという内容でした。
それはともかく、現在のロシアは人民元の地位が高くなってきており、数年前とはかなり変わっていることが伺えます。
個人的に気になったのは、これまではロシアのECモールに中国企業が参入しているという話でしたが、この記事を読むと、中国のECモールがロシア市場参入を検討しているという部分があります。そうなると、ロシア制裁の抜け道になる可能性もわずかながらにあるように感じるため、このあたりがどうなっていくのかは今後も注視していく必要がありそうです。
個人的には政治と経済は別という考え方は呑気に過ぎると考えるため、経済安全保障の側面からも見ておく必要があると思います。