こんにちは。ジェイグラブの横川です。
日本は経済指標的には景気回復していますが、給料を上げないことで達成した感もあり、生活者にとっては景気の恩恵を受けておらず、「失われた30年」などと言われています。そのため、一人あたりGDPなどは近隣諸国に抜かれたという報道もありましたし、実際、東南アジアに行ったときでも現地の人の明るくお金を使っている様を見ていると、日本はもうかなり貧乏になったなと思いました。
一方で、インバウンドは潤っているのかと言うと、観光客が利用する店舗や宿泊施設の中には外国資本になっているところもあり、純粋に喜べるわけでもなさそうですし(参考:「【インバウンドの罠】日本の観光は楽しむのも稼ぐのも外国人…大半の国民は恩恵どころか、観光公害のみという「ヤバすぎる事態」(現代メディア)」)、YouTubeなどで日本旅行のVlogをアップする人たちの動画を見ていると、ほぼ全員同じようなところにしか観光していません。したがって、インバウンドでも完全な格差が生まれていると思います。
そうした「失われた時代」ですが、高インフレの影響で欧米でも突入するかもしれません。それは欧米のZ世代が偽物を購入することに躊躇がないと言うデータから見えてきます。
Z世代の消費者は偽物を好む
ブランドや政府機関は、Amazon、eBay、Etsyなどのオンラインマーケットプレイスに対して、偽物の商品をしっかり取り締まるよう強く求めている。
しかし、最近の調査では、特に若い人たちは、偽物や模倣品を買っても平気だということがわかりました。EUの知的財産庁が15歳から24歳のヨーロッパ人(Z世代)を対象に行った調査によると、若者の37%が過去12カ月間に1つまたは複数の偽物を意図的に購入したことがあるという。
Z世代が意図的に購入することが多い模倣品は、衣類・アクセサリー(17%)、履物(14%)、電子機器(13%)、衛生・化粧品・パーソナルケア・香水(12%)でした。
Z世代の消費者のうち、30%が正規品と模倣品の購入について「関心がない」と回答し、男性26%に対し女性は36%と無関心度が高いことがわかりました。
ロンドンとロサンゼルスを拠点とするソーシャル・クリエイティブ・エージェンシーのザ・フィフスのベラ・ヘイルズは、フィナンシャル・タイムズに寄稿した記事の中で、「偽造品は、若い消費者にとって間違いなく受け入れられている」と書いています。
問題の一つは、Z世代の消費者が高級品は割高であると認識していることです。「デザイナーはかつては品質を意味していたが、今は多くのコスト削減により、高価なバッグを買っても、糸がほつれたりなど欠陥がある」とTikTokのあるユーザーは語っている。
また、ある人は「コピー品が本物に近づいてきていることが自分にとってはとても良いと感じています。ブランドは、品質を落としておきながら、価格を急上昇させているからです。」 と答えている。
調査会社GWIのデータ・ジャーナリスト、クリス・ビアはフィナンシャル・タイムズの取材に対し、「その背景にある経済は非常にシンプルで、人々はより安い代替品に移行しているのです」と語っています。この調査会社は、12カ国の2,110人のZ世代を調査し、20%がインフレが自分の消費に大きな影響を与えていると回答したことを明らかにしました。
「消費者、特に若い人たちは、目立つ消費から離れつつあります。彼らはまだステータスを得ることに関心があるが、その代わりに倹約によってそれを達成しようとしているのです」
主要なマーケットプレイスが偽物を排除しようとする中、売り手はTikTokに移行しているようです。フィナンシャル・タイムズによると、#dupes(偽物という意味)というハッシュタグは21億ビュー、#Reps(レプリカの略)は19億ビューを記録しているそうです。
TikTokのすべての動画が偽物を売っているわけではありませんが、多くの「インフルエンサー」がお金を節約するためにどこで、どのように見つけるかを視聴者に示唆している。
Z世代にとってのアマゾン、イーベイ、エツィーとは
しかし、大手オンラインマーケットプレイスが模倣品をを識別するためのコントロールを強化している中で、消費者は模倣品を見つけることができるのでしょうか?
実際、「ドュープ(偽物)」という言葉で、コピーに近いと思われる商品が登場することもあり、ブランド名で販売されているわけではないので、コントロールをすり抜けているケースもあります。
レギュレーションは厳しくなっていくでしょうが、Z世代が模倣品購入に関心を持つようになったことは、ブランドにとって懸念材料であることに変わりはありません。
少数の高級ブランドは、大手マーケットプレイスとのコラボレーションを積極的に進めています。今週、イーベイは、高級ブランドが自社のプラットフォームで本物の商品を販売することを促進するための新しいプラットフォーム「Certified by Brand」を立ち上げました。ただし、この取り組みに参加するブランドは、現在限られています。
近い将来、イーベイは、本物のハイエンド製品に興味を持つ、より多くのバイヤーを引き付け、売上を増加させるために、真正性保証プログラムに注力していきます。真贋保証のもとで販売される商品は、購入者に転送される前に真贋が確認されることになります。
そして、エツィーに関しては、インターネットフォーラムでの出品者のコメントから、偽物の排除に向けた取り組みを強化しているようです。
2月、エツィーはプラットフォーム上に模倣品が多すぎるという批判を受けていました。この問題に正面から取り組んでいるとまでは言えませんが、以前より多くの模倣品をプラットフォームから削除しているようです。
その一方で、アマゾンは模倣品の取り締まりを強化し続けています。4月には、ブランド、メーカー、流通業者を集めて模倣品と戦うための新たな方法を発表しました。
最近設立された偽造品対策取引所(ACX)は、アマゾンにとどまらず、他のチャネルでの販売を目的とした商品の識別とアクセスを防止することを試みています。
しかし、結局のところ、この問題の中心はTikTokであるように思われます。ソーシャルメディア・プラットフォームが模倣品を宣伝するユーザーを取り締まる積極的な措置を取らない限り、規制当局がZ世代ユーザーのアクセス制限せざるを得なくなってしまいます。そうなれば、そうなったで路上の屋台の売上が伸びてしまうでしょう!
参考:Gen Z Shoppers Love Fake Products
おわりに
真贋鑑定のポイントは、公開するとより精度の高いニセモノが出てきてしまうため、完全ないたちごっこになっています。しかし、海外のプラットフォームは真贋鑑定ができる専門家と協力関係を作ることで、排除を強力に勧めています。
また、あるプラットフォームが締め出しを強力に行っても、別のプラットフォームに移動されて効果なしとなったり、アダルト要素の強い同人誌などが符牒を使って取引されるように、ニセモノも符牒で取引されるようになる可能性もあります。
こうした対策としてAIを活用するということもありますが、AIとて判断ミスはあります。その判断ミスで永久退店などをさせられたらたまったもんではありません。プラットフォーマーには、機械と人力とバランスよく、かつ柔軟に運営していただきたいものです。
また、記事は欧米を中心に論じていますが、中国も悪化しているという論調の記事をよく見かけます。
したがって、八方塞がり感がありますが、そんな中で売れるようにするには、「いかにすごい物か」ではなく、「いかに必要か」と思わせる工夫が重要です。