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今年のAmazonプライムデーは記録破りだったが

こんにちは。ジェイグラブの横川です。

アマゾンが恒例のセールスイベントを行いましたが、今年のセールスからは、多くの日本の中小企業を支援してきて聞いてきた話を思い出し、日本企業の商売に対する下手さが浮き彫りになった印象があります。


今年のAMAZONプライムデーは記録破りだったが

7月16日と17日の2日間にわたって開催された毎年恒例のeコマースイベント、Amazonプライムデーは、大幅な値引きもあって、今年の米国オンライン売上高は過去最高の142億ドルに達した。Adobe Analyticsによると、これは昨年より11%増加したとのことです。

その理由はいくつかありますが、従来と違って、AMAZONの競合であるeBayやEtsyが今年は便乗したり、ユニークな対抗企画を行わなかったため、AMAZON1極に集中したというのもあります。
そして、例年通り、モバイル、住宅、家具、家電製品などの一般的に高額なカテゴリーでは売上が76%増加したようです。
最後に米国のプライムデーの割引率は平均22%で、昨年より10%増加しました。割引率が最も高かったカテゴリーは、一般衣料品(平均割引率33%)、家庭用品・家具(21%)、健康・美容(21%)ということで、「すぐ欲しい、安い」が基本で、これに合わない種類の製品は難しいことがわかります。

これについて、セールスフォースのカイラ・シュワルツは「教訓は単純です。小売業者が値引きを実施し、真の価値を提供すれば、蓄積された需要の圧力弁が解放され、驚くほどの成功を収めることができます。そうでなければ、消費者が他へ行ってしまうため、小売業者は損失を被るリスクを負うことになります。」と語っています。

面白いのは「値引きすることで真の価値が発揮される」と言っていることです。裏を返せば、日常の価格はボッタクっていると言っているようなものです。ただ、これは欧米もインフレで物価が高騰しており、経済的に苦しい状況であるからという側面があります(日本の場合は、それに加えて実質賃金が最長で上がっていないので、余計に苦しいですが)。

ハロー効果を無視するつもりなら越境ECでも勝ち目はない

今回のAMAZONプライムデーで注目されたのが「ハロー効果」です。ハローはHelloではなく、Halo、聖人の後方から指す光のことで、仏教などでは後光、光背などといいます。ある一部の特徴的な印象に引きずられて、全体の評価をしてしまう効果のことで、非合理的な心理現象である「認知バイアス」の一種です。

ひとつわかり易い例を上げるとしたら、スーパーやコンビニの棚です。特定のメーカーの商品だけが在庫が少ないと、それだけが人気でよく売れているのではと勘違いしてその商品だけが売れていく現象があると思います。それに似ています(実際は店員が補充を忘れただけかもしれませんが)。

全体的に安くなっているせいもあって、小売業者の 28% が独自の便乗セールイベントを開催するか、ハロー効果の恩恵を受け、プライムデー初日にオンライン取引が 73% 増加したようです。この増加率は昨年より 21 パーセントポイント高く、昨年は電子商取引事業の平均日よりも 52% 取引が増加したとのことです。

安く売ることを悪のように捉える商才のない方が多い印象がありますが、永遠に安売りせよと言っているのではありません。期間限定で行うのは効果があります。それによって潜在顧客をあぶり出すことができ、同時にキャンペーン中に買えなかった人は、キャンペーン中に人気のあったものを定価で買おうという気にさせます。
また、安売りすることでブランドイメージが・・・という方もいますが、売り手本人がそれを言うのは気持ちとしては非常にわかりますが、客観的に見た場合、それほどまでのブランドかということを冷静に見たほうがいいでしょう。世間はそこまで神格化してみていません。というより、海外から見ればほぼ無名です。これはセミナーでよく言っていることですが、国内で創業者が行ったことを、もう一度越境ECでなぞる必要があるのです。

消費者に対しては認知バイアスを起こさせるように作戦を練るのが重要ですが、商品によってAMAZONに向くものとそうでないものがあるにもかかわらず、日本の場合、売り手側が越境ECならAMAZONだろうという認知バイアスを持ってしまっているケースが多いので、AMAZONにとってはいいカモです。日本人は海外の人より、ロジカルシンキングが不得手で、目的と手段もよく混同します。「消費者には冷静にさせない、売り手の御社は冷静に」が課題でしょう。

参考:The top ecommerce trends from record-breaking Amazon Prime Day 2024
   Prime Day event creates ‘halo effect’ on ecommerce in first 24 hours


Writer 横川 広幸

横川 広幸 取締役 越境ECコンサルタント eBayJAPAN創業時に法人営業、マーケティングに従事。eBayに連携した越境ECサイト “Tokyotrad” で日本の仏具を世界86カ国に販売。自らの越境EC成功体験を越境ECアドバイザーとして日本全国でセミナー講演や個別相談を行う。

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