越境ECの急速な成長により、自宅にいながら世界中の様々な商品が簡単に手に入れられるようになりましたが、一方で、海外の商品があまりにも”魅力的”であると、そちらにばかり購入してしまい、自国製品の売上げが落ち込んで国内業者にダメージを与えるという弊害も生じていることも事実です。
ブラジル、個人消費用の越境EC商品に対する輸入税免税措置を撤廃
ブラジルの越境ECですが、ECプラットフォームを通じて個人用に輸入される50ドル未満の商品に対する輸入税の免税措置を8月1日から撤廃、新たに20%の税率を適用しました。この措置は、国内産業保護の観点から導入されたもので、国内の産業界や小売業界の懸念を解消するためのものです。
新しい税率の影響と背景
2023年8月以降、ブラジルでは50ドル未満の商品について60%の輸入税が課されていましたが、一定の条件を満たす場合に限り非課税でしたが、その条件は財務省が設立した「レメッサ・コンフォルメ」プログラムに登録するというもので、このプログラムに登録していると20%の輸入税が適用されます。登録を行わない場合の税率は60%のままです。
すでに「レメッサ・コンフォルメ」プログラムに登録済みの主要な越境ECプラットフォームには、中国のアリエクスプレス(Aliexpress)、米国のアマゾン(Amazon)、中国のシーイン(SHEIN)、シンガポールのショッピー(Shopee)、中国のティームー(Temu)などがあります。これらのプラットフォームは今後、輸入税20%に加えて商品流通サービス税(ICMS)17%も課税されることになります。
国内産業の保護と反応
国内産業保護のために提案されたこの措置ですが、やはりブラジル国内の産業界からは大歓迎されているようです。全国工業連盟(CNI)は、輸入税率の引き上げを「国内産業にとって大きな勝利」と評価していますが、実は国内事業者には45%の税率を負担させており、越境ECプラットフォームの負担よりも高いので、公平な競争には至っていないとも指摘されています。
国内産業や小売業界の懸念としては、ブラジル産の商品の全てに税を支払っているのに対し、国外で生産された商品が非課税とされることが不公平な競争を生むため、輸入税の免税措置が撤廃されることとなったということです。
Source:個人消費用の越境EC商品に対する輸入税免税措置を撤廃(ブラジル)/JETRO ビジネス短信
おわりに
ブラジルの「レメッサ・コンフォルメ」プログラム(Programa Remessa Conforme)の詳しい内容については、ブラジル財務省のサイトも目を通してみてください。
越境ECによる海外…特に中国発のECプラットフォームから国内産業を保護する動きは、今やブラジルに限った話ではないですよね。米国、トルコでも行動を起こされているし、カナダでもなんらかの処置を検討しているとも発表されています。EUではAmazonやAliExpressに続き、今年SHEINとTemuをVLOP(EUデジタルサービス法(DSA)に基づく超大規模オンラインプラットフォームのリスト)に指定されていますので、150ユーロ未満の商品に関税を課す準備を進めているという話題も入ってきております。
このような各国の動きで日本からの越境ECにも影響を及ぼすことがあります。今回はブラジルの「レメッサ・コンフォルメ」プログラムへの登録、輸入税免税の措置を最大限に利用してということですが、いずれにしても”賢く”越境ECビジネスをしていく必要はありますので表の話だけはなく、裏の話も?クライアント様にお伝えしています。
今後も越境ECや世界の最新情報をお伝えしていきます!