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Amazonの新激安?ECサービス「Amazon Haul」~Shein・Temuとの相違点・注目ポイントを深掘り

Amazon.com(米国)は、2024年11月13日、低価格商品の特化型プラットフォームAmazon Haul(アマゾン・ハウル)のベータ版を開始しました。アウトレットサイトになるようです。

競合他社への対抗策としての「Amazon Haul」

今年は特に、EU、アメリカ、東南アジアなどで様々な規制の対象としても話題となっている中国の格安ECサイトSheinやTemuですが、引き続き低価格で幅広い商品を展開、ファッションや日用品の分野において今や世界中で大きな人気です。インドネシアではあまりにも流行りすぎて「利用禁止」に間もなくなるようですが、他の国も追従する流れのようです。自国のEC事業者がガッツリ “売上減” 、それだけインパクトが大きいということです。

Amazon Haulはこれらの “成功” モデルを踏襲しつつ、Amazonの信頼性と規模を活用して、購入体験の向上を図るようです。Amazonの大規模な物流ネットワークやPrime会員特典も、このプラットフォームを利用できますが、現時点ではアメリカのみでのベータ版で開始していますが、欧州、その他多くのAmazonユーザーを抱える国々でも早い段階でサービスが開始されるのではないかと報道されています。

サービスの特徴と利便性

Amazon Haulへのアクセス方法は、従来のAmazonショッピングアプリの検索バーで「Haul」と検索、もしくはメインメニューアイコンからAmazon Haulに移動するか、ブラウザで直接 www.amazon.com/haulにアクセスします。(今後URLが変更になる可能性あり)

プレスリリースによると、Amazon Haul独自のショッピング体験、検索、カート、チェックアウトを備えており、顧客は低価格の商品を大量に購入することができるとのこと。全ての商品は20ドル以下で、大半は10ドル以下、中には1ドル以下の商品もあります…。1回の注文に複数の商品を注文する場合、50ドル以上の注文で5%オフ、75ドル以上の注文で10%オフとなり、購入者の購入意欲をさらに掻き立てる割引設定も充実させています。

また、「Amazon Haul」はスピードに重点を置いていることを強調、配送は1~2週間で到着すると発表されていますが注文の75%が7日以内に届くことを保証。さらに25ドル以上の注文で送料が無料でそれ以下は一律3.99ドルです。

返品サービスについても3ドル以上の購入品であれば、商品到着後15日以内に無料で返品が可能で、全米8,000カ所以上の場所で返品できるなど、便利で手間のかからない返品サービスを謳っています。

ターゲット層とマーケティング戦略

Amazon Haulのターゲット層は、低価格商品を好む若い消費者、特に大学生や新社会人などを主要なターゲットとしています。

出典:Amazon

Amazon Haulのインターフェースは、従来のAmazonとは明らかにトーンが異なります。古典的な星の評価はなくなり、「Best seller」ラベルと、よりカラフルで楽しいインターフェイスに置き換えられています。絵文字をふんだんに使い、「Crazy law price here!」などのようないかにも若者受けしそうなスローガンで、説明文も生き生きとした印象があります。

「Haul」とは、重いものを引きずる、引っ張りだすなどの意味で、最近では主にインフルエンサーが購入品を開封して紹介する動画のことをさしますので、若い購入者にとって馴染み深い言葉です。低価格販売と同時に、競合プラットフォームの主要な強みである「衝動買い」を促す側面を取り入れる目的のようです。

SHEIN、Temuと一線を画す?

Amazonでは「A-to-Z保証」プログラムを推進しており、このプログラムは「Haul」経由での購入にも適用されます。

Amazonでは出品者がAmazon Haulで提供する商品を審査し、購入者は安全で本物、適用される規制に準拠した商品を安心して受け取ることができます。Amazonの販売者サービス担当バイスプレジデントであるダルメッシュ・メータ氏は、この保証により顧客は「製品が安全で期待に応えられるものであり、安心して購入できる」と説明しています。信頼性とセキュリティの問題、つまり現在EUなどで問題視されているSHEINとTemuの商品の真贋や安全性などを懸念する購入者に向けての言葉でしょう。

おわりに

Amazon Haulはホリデーシーズンを前に開始されたことから、ギフト需要を取り込むことも意図されています。低予算で魅力的なプレゼントを探している消費者にとって大きな魅力を持ちそうです。

とはいえ、配送時間が1~2週間というのは従来のAmazon、特に注文した翌日に届くAmazon Primeに比べるとちょっと遅いですよね。理由ですが、Amazon Haulの商品は「中国の倉庫」から直接発送されるからでアメリカ配送ではありません。中国の圧倒的な激安国際配送網を利用することで物流コストを大幅に削減させ、なんと関税の支払いまでを回避する思惑もあるようです…。

しかしながら、返品ポリシーや商品の品質保証といったAmazonの既存の強みが活かされていますので、これまでの低価格市場に対する懸念(例えば、品質の低さや配送の遅れ)を払拭する可能性はあるでしょう。

Amazon Haulは、低価格市場での競争激化に対応した革新的な試みであり、利便性と信頼性、そして大規模なマーケティング活動を通じて、SheinやTemuに対抗するだけでなく、新たな消費者層の獲得にも成功する可能性があるのではないかと思っています。

参考文献:Introducing Amazon Haul—a broad selection of products $20 or less, with most under $10(Amazon)

Writer 山田彰彦

山田 彰彦 代表取締役 越境ECコンサルタント eBay JAPAN創業メンバー、ヤフー株式会社コマース事業などを経て越境EC専門 ジェイグラブ株式会社を創業。越境EC歴24年。イーベイ・ジャパン公認コンサルタント、ジェトロ新輸出大国コンソーシアムEC専門家、中小企業庁「新しい担い手」越境EC委員も務める。

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