天猫(Tモール)や淘宝網(taobao)、AliExpressなど、中国国内・国外、様々なECサイトを提供している中国のアリババグループは、日本市場、日本の消費者向けに最適化された越境ECサイト「TAO」の提供を開始しました。
今回は、この新進気鋭のECサイトを深掘りしたいと思います。
「TAO」の特徴
TemuやSHEINとは異なる高品質ライン
「TAO」では現在、衣類やアクセサリーなどのファッション関連商品を筆頭に、インテリア家具、アウトドアキャンプ、ペット用品からオフィス用品など、300万点以上のアイテムを取り揃えており、今後も商品数やカテゴリーはさらに拡充していく予定とのこと。安価でありながらデザイン性の高い製品を提供しており、数万円台の家具や家電なども販売されています。TemuやSHEINよりも少し高級な路線で、価格と品質のバランスが取れた商品展開が特徴です。読者の皆様が想像されるであろう “中国製の悪かろう安かろう” のイメージを覆し、日本市場でも受け入れられやすい商品とサービス内容です。
初回購入者への送料無料サービスでまず1回目の購入を促進しており(日本の越境EC事業者も参考にしてくださいね)、さらに、購入者には40日間返品OKという制度も提供、ショッピングに対する安心感を高めています。返品ポリシーが手厚い分、販売者にとってはリスクも伴うため、販売者側にとっては注意ポイントといえるでしょう。
日本ならではの便利な決済手段と物流対応
「TAO」では、競合でもあるヤフーショッピングやヤフーオークションを運営するソフトバンクグループの「PayPay決済」利用がデフォルトです。アリババ傘下のアプリでありながら、日本のソフトバンクのキャッシュレスシステムを取り込んでいる点が注目です。配送においても、佐川急便やヤマト運輸と提携しており、日本国内でのスムーズな決済と配送体制を実現していますね。こうしたローカライズされた対応により、日本の消費者に向けて使いやすさを追及したECプラットフォームとなっています。
世界の低価格EC市場の勢いと日本への影響
低価格EC市場は、今や世界中で拡大しており、AmazonやeBayといった既存大手の業績にも影響を及ぼしています。
日本では、「とはいえ、所詮は低価格品を購入する層だけにしか影響がないだろう」というイメージを強く抱いている人が多いですが、2024年上半期のTemuの売上高は推定200億ドル(約3兆600億円)に達し、2023年の年間売上高153.3億ドルを上回りました。またSHEINにいたっては、2023年の総売上額は325億ドル(約4兆9,700億円)と推定されていることにぜひ注目していただきたいと思います。2024年の総売上額は10兆円を楽に超える試算もあるほどです。
ここまでの人気は、もはや低価格商品を購入する消費者だけでなく、中間層から富裕層で高額商品を好む消費者層にも当然浸透している結果であり、幅広い層に影響を与えているのです。国内市場でも、こうした低価格で高品質なECプラットフォームが広まると、従来の事業者にとって新たな競争の波が押し寄せてきました。あの巨人Amazonでもこの中国EC勢に対して低価格EC販売アプリを新たに提供する準備が整っているという話もあるようです。
おわりに
日本でも、諸外国のようにデミニマス(免税限度額)撤廃が議論される可能性がありますが、まだ確定事項ではありません。しかし仮に撤廃される場合、低価格ECに依存している消費者層だけでなく、幅広い層への影響が想定されます。特に富裕層を含めた顧客層の購買行動にも変化が見られ、従来のEC事業者にとっては、さらなる競争圧力となると想定しておくべきです。
「TAO」によって、日本のEC市場に新たな風が吹き込まれ、従来の国内事業者にとっても競争力の強化が求められてくるであろう今後、国内の事業者が優位性を保つためには、品質やアフターサービスの充実、ユーザー体験の向上に力を入れることが重要です。また、ECサイトの差別化やユーザーの信頼を得る戦略も必要となるでしょう。
もし、自社のEC戦略に不安がある場合や、競争力強化のための助言が必要であればご相談ください。
「TAO」の日本市場参入は、購入者と販売者双方に新しい可能性と課題をもたらしています。日本のEC市場がどのように変わっていくのか、今後も注目していきたいところです。
参考文献:
アリババグループ、日本消費者向け越境ECアプリ「TAO」をリリース ~快適な買い物体験を提供、順次機能拡充へ~(PR TIMES)
アリババグループ、日本のニーズに合わせた越境ECアプリTAOを提供開始(eccLab)
アリババ、日本で越境ECアプリ「TAO」 Temuに対抗(日本経済新聞)