PHOTO by Frederic Legrand – COMEO
こんにちは。 ジェイグラブの横川です。
私はかなり冷静に中国ECの功罪について普段のセミナーでも話しているつもりなのですが、中国だけが起死回生の唯一の策とばかりに夢中になっている人や、日本のメディアが報じる「すごい売上高」という、わかりやすい情報に触れて盲目的になっている人には、中国EC対して批判的に映るようです。
まぁ、何事も盲目的になっている人は、聞く耳持たないので、自分で気づくまで放っておくしかありませんから別にいいんですけどね^^;)。
日本のメディアは、11月11日のことだけ伝えて、あとのことはほとんど伝えないので、たしかにそれだけしか情報の接点がないと中国はすごいとしか見えません。
しかし、欧米メディアは日本のメディアが伝えない側面をしっかり伝えてくれますので、今回はロイターの記事を紹介します。
アリババのEコマース帝国、ドウインとピンドゥオドゥオに脅かされる
アリババ・グループは10年以上にわたり、中国の電子商取引の王者として君臨してきたが、最近、この分野への積極的な競合の流入に不安を覚え、その王座は揺らいでいる。
今週、アリババはEコマース事業を中国向けと海外向けの2つのユニットに再編することを発表した。
中国では、老舗ブランド向けのTmall(天猫)と、あらゆる業種のセラーを受け入れるタオバオ(淘宝網)の2つの主要マーケットプレイスで、年間1兆円を超える注文を処理しています。
しかし、アリババは顧客管理収入(CMR)の伸びが急激に鈍化している。CMRとは、通常、全収入の3分の1から2分の1を占める、加盟店へのサービス料金から得られるお金である。7-9月期はわずか3%増で、前年同期の20%増を下回っている。
アリババは先月、年間収益見通しを引き下げた。また、同社の代表的なショッピングイベントである「シングルズ・デー(独身の日)」の今年の売上高または商品総額(GMV)は8.5%増にとどまり、これまでで最も低い伸びとなった。
こうした期待はずれの数字は、規制の変更やパンデミックによる経済成長の鈍化により、消費者が散財を躊躇していることが一因となっている。
さらに、競争は激化し、中国の電子商取引で最も急成長している分野で、一部のライバルがアリババに進撃している事実も浮き彫りになっています。
アナリストは、TikTok(ティックトック) の姉妹アプリで比較的新しいバイトダンスのドウイン(抖音)をライブストリーミング E コマースの有力候補として挙げており、ナスダック上場のピンドゥオドゥオ(拼多多)は農村部と格安ECの分野で主導権を握っています。
上海のWanqing ConsultancyのCEOであるLu Zhenwang氏は、「他のプラットフォームがアリババよりも速く成長しており、アリババのパイを奪っていることを意味しています」と述べています。
アリババはロイターに対し、常に激しい競争に直面してきたと述べ、セラーにとって強力なライブストリーミングツールである「タオバオライブ」を提供し、割引ショッピングのプラットフォーム「タオバオディールズ」とコミュニティグループ購入のプラットフォーム「タオカイカイ」が低価格帯の市場でシェアを拡大していると付け加えた。
新進気鋭のドウイン(抖音)
ドウインは今年、GMVを1兆元(1550億ドル)以上に急増させることを目標にしていると、(メディアに話す権限がなく、身元を明らかにすることを拒否してはいるが)同社関係者が直接語っている。
ドウインは、電子商取引事業に関するコメントを拒否しているが、これは、昨年獲得する見込みだった1500億元(2020年11月に情報筋が出した数字)の6倍以上だ。
6億人超のデイリーアクティブユーザーを誇る同アプリは、2018年に加盟店がプラットフォーム上に出店できるようになった。今年に入ってからは、ブランドが旗艦店を出店しやすくなった。
中国の化粧品大手Perfect Diaryの親会社であるYatsenは、ドウインのプレゼンスにさらに投資する予定だ。それに比べ、同社の収益の約40%を占めるTmallでの売上は縮小している。
CEOのHuang Jinfengは先月行われたアナリスト向け電話ミーティングで、「ドウインは今、ブランドの成長にとって非常に重要な要素になりつつある」と述べています。
コンサルティング会社Questmobileによると、セラーはユーザーがドウインに費やす時間の長さに魅力を感じており、10月の平均時間は、タオバオの350分に対し、1,871分であった。
さらに、アリババのライブ視聴者数は、中国最大のライブストリーミング・セレブリティである口紅王子ことリー・ジャーチーや元歌手のViyaという2人に集中する傾向があるが、対し、ドウインは多くのライブストリーマーを集めることができる。
安くて強い
Eコマースのもう一方がピンドゥオドゥオ(拼多多)です。底値の価格設定と、ユーザーが購入した商品をメッセージングプラットフォームで共有し、より安い価格で購入できるように促すグループ購入モデル(※)のおかげで、中国の農村住民に人気があります。
※・・・米国のグルーポンや日本にかつてあったネットプライスのような仕組み(共同購入)です。
2020年のGMVは66%増の1兆6700億元となった。ゴールドマン・サックスによると、第4四半期のGMV成長率は20%と控えめだが、それでもアリババの最近の業績よりははるかに好調だという。ピンドゥオドゥオも詳細な公式コメントは控えています。
アナリストによると、農村部の電子商取引は通常の電子商取引よりも人によるビジネスであり、アリババは地元の重要な商人やメーカーとの関係構築でピンドゥオドゥオに何年も遅れているという。
「すでにピンドゥオドゥオで掘り出し物を買うのに慣れている消費者にとって、新しいプラットフォームに乗り換えるのは難しい」と述べています。
アリババはまた、テンセントのウィーチャット(WeChat)のようなメッセージングプラットフォームに直接アクセスできないことが妨げとなって、ピンドゥオドゥオほど効果的にバイラルマーケティングに関与できてもいないと言われている。
ライバルと規制
アリババはEコマース事業を刷新しています。新たに発表された組織再編は、昨年のタオバオ・ディールズの立ち上げと、9月の2つのコミュニティ・マーケットプレイスのタオカイカイへの再ブランド化に続くものです。
しかし、それでも課題は山積みで、アナリストはアリババが中国の電子商取引で最も速い成長を見せていたころに戻れるかどうか疑っています。
ドウインとピンドゥオドゥオは、少なくとも10社ある競合他社のうちの2社に過ぎません。JD.com(ジンドン、亰東) は依然として最も近いライバルであり、メイトゥアン(美団)とバイドゥ(百度)はそれぞれ検索とフードデリバリーの大手企業ですが、現在はEコマースの提供を拡大しています。同時に、小規模な新興企業が靴や化粧品などのニッチなセグメントをターゲットにしています。
さらに、アリババは、規制当局の取り締まりにより、自社のプラットフォームのみに出店することを求める方針を断念せざるを得なくなり、その影響を定量的に把握することは困難ですが、その分、打撃を受けています。
Wanqing ConsultancyのLu氏は、「アリババが状況を覆せるとは思いません」と語った。
おわりに
下記の関連記事にもあります、「中国、独身の日は本当にすごかったのか?」でも触れていますが、急成長した反動もあって、最近は伸び率など、いろんなデータで成長鈍化の傾向があります。
その反面急成長しているのが、ライブコマースや、ティックトックなど、担当者が画面に出たがらない日本企業の苦手とするジャンルです。
中国での成長のヒントは、トレンドについていくことなのかもしれません。
そして、国際情勢が通商分野に波及する可能性もあるため、中国一辺倒では、中国政府の決定如何では、明日から食い扶持がいっさいがっさい消えるなんてこともあり得るので、中国以外の地域も同時に挑戦するほうが賢いでしょう。
株などと同じです。一点集中で買えば、高騰すれば大儲けですが、暴落すれば大借金です。そこで、相当のプロでもない限りはポートフォリオを組むでしょう。それに似ています。オンリーチャイナで浮かれている人は、いつ夢から覚めるのかなぁ・・・
部分参照:Analysis: Alibaba’s e-commerce empire under threat from Douyin, Pinduoduo