クリスマスや年末年始といったホリデーシーズンでは、各国で購買行動が活発になります。そんな中、とあるECショップから手書きのクリスマスカードとギフトが届きました。
この「SANTA EULALIA」は、1843年創業のスペイン・バルセロナにある老舗のマルチブランド高級衣料品店です。リアル店舗ではオーダーメイドのスーツやシャツを提供する一方で、ヨーロッパを中心としたハイブランド商品も取り扱っています。また、ECサイトではアパレル系ハイブランドのセレクトショップとしても広く認知されています。
ハイブランドECの変遷
ハイブランド業界では、近年までデジタル化が優先事項とはされていませんでした。理由として排他的なブランドイメージが、膨大なアクセスと相容れないと考えられていたからです。しかし、コロナ禍以降のEC利用率の上昇や売上増加は、ハイブランドにデジタル化=EC化の重要性を再認識させるきっかけとなりました。
ヨーロッパには「SANTA EULALIA」のほかにも、ドイツの「MY THERESA」やイギリスの「MR PORTER」といったハイブランドを取り扱うセレクトECショップが数多く存在し、人気を集めています。しかし、昨今の欧米市場では、中国発の格安ECサイト「Temu」や「SHEIN」、「AliExpress」の爆発的な流行により、ハイブランドのオリジナルECショップだけでなく、これらセレクトECショップも苦戦を強いられています。
2023年に「Farfetch」が破産危機に直面したことは記憶に新しいところで、韓国の大手EC企業「クーパン」に買収されています。2024年6月には「Net-a-Porter」が中国市場からの撤退を発表、同年10月には「MY THERESA」に買収されています。
ハイブランド系ECサイトの生き残り戦略から得るマーケティングのヒント
冒頭で触れたクリスマスカードとギフトの話題に戻ります。
たとえばクリスマスや誕生日といった記念日や節目に、予想外のサービスやギフトを受け取ると、多くの人が嬉しい気持ちになります。「SANTA EULALIA」のような高級路線のECショップは頻繁に利用されるものではないかもしれません。しかし、このような心のこもったサプライズが顧客に良い印象を与え、「またこのサイトで買い物しよう」という気持ちを芽生えさせることは、購入者心理として自然な流れです。
さらに、記念日だけに限らず、日常の購入体験においても、真心や誠意を伝えることで顧客の心をつかむチャンスがあります。以下はハイブランド商品購入時の例です。
商品を専用カバーに梱包することで、購入した商品がいかに丁寧に扱われて梱包されたかが伝わります。サンクスカードも嬉しいですね。また、認知度のあるブランドであれば、こうしたショッパー(紙袋)が同梱されているのは喜びもひとしおです。
こちらは手書きのサンクスカードと、香水を染み込ませたカードが同梱されていて、箱を開けると香水の良い香りがふんわり漂う“仕掛け”になっています。ただし、香水の香りが苦手な顧客もいるため、これは少々高度な手法かもしれません。顧客の好みを事前にパーソナライズした上で実践してみるのがよいでしょう。
香水瓶のカード裏には、この香りの香水の商品名と、すぐに商品ページにアクセスできるQRコードが記載されていて、このような工夫も大いに有効です。こうしたインターネット上では体験できない「試着」のような要素や、イチオシ商品のカタログを同梱することで、次回購入の促進につなげることができます。
おわりに
リアル店舗でもECショップでも、顧客をファンにすることは、大手企業でも小規模事業者でも共通のテーマです。新規顧客の開拓・獲得はもちろん重要ですが、購入者にリピート購入してもらうための工夫も同様に大切です。
冒頭で紹介したような大掛かりなギフトを用意する必要はありません。感謝を込めたサンクスカードの添付や、次回購入時に使えるスペシャルクーポンの提供など、小さな取り組みから始めてみましょう!