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越境ECブログ

スペインの現状から考える梱包の重要性 (越境ECの盲点)

越境ECの需要が世界的に拡大する中、商品を安全に届けるための「梱包」の重要性が改めて注目されています。特に海外発送では、日本国内と同じ感覚で対応しているとトラブルに発展する可能性がありますのでご注意ください。

スペインでの配送事情:10人中7人が破損品を経験

上の写真は、弊社スペイン在住スタッフが現地のECサイトからプライベートで購入した商品です。

①はイギリスから届いたプリンター。②は配送が遅延していて、やっと届いた時の外装の段ボール箱の状態。(スペイン国内からの発送で中身は無事)③はスペインの某有名アパレルブランドのジャケットで、こちらもスペイン国内から届いたものですが、スタッフ曰く、毎回破損して届くわけではないものの、このような遭遇率は比較的高いとのことです。

スペインの物流専門メディア「NexoLog」では、スペインのオンライン購入者の10人中7人(70%)が、破損した商品を受け取った経験があると報告されています。さらに25%の消費者が、オンラインショッピングの際に商品が破損することを懸念しているとも伝えられています。この現状は日本の消費者にとっては驚きかもしれませんね。

日本では配送業者や航空輸送業者が非常に丁寧に荷物を扱うことが一般的です。特に「壊れ物注意」や「上積厳禁」といった表示があれば、それを尊重して荷物が慎重に扱われることが期待できます。しかし、これは日本特有の文化といえます。多くの国々では、このような繊細な対応は期待できないのが現実です。梱包が十分でないと、商品が損傷したり、中身が破損した状態で届くリスクが高まります。

ダンボール市場の成長と課題

一方で、このような破損の問題に対応するために、世界の市場動向にも注目が集まっています。米国の市場調査によると、2023年の段ボール包装市場は約1,800億ドルに達すると予測されています。この成長の背景には、越境ECの拡大と、環境に優しい持続可能な包装への需要の高まりがあります。

特に、段ボールは軽量でありながら耐久性があり、リサイクル可能な素材として広く使用されています。しかし、段ボールの品質やデザインが不十分だと、破損のリスクを完全に防ぐことはできません。梱包材の改良や商品保護のためのイノベーションが求められる中、多くの企業が強化された段ボール素材や新しいパッケージデザインを導入しています。

越境ECで注意すべき梱包のポイント

越境EC配送では、複数の国や地域を経由して商品が運ばれることが多く、輸送中の衝撃や乱雑な取り扱いを想定した梱包が必要です。それだけでなく、配送コストや各国の規制を考慮した対応も必要になります。特に重量が増えると配送料が高くなりますが、国ごとの梱包材に関する規制が課される場合があることは過去ブログ (1) (2) などでも何度かご紹介しているように、ドイツでは環境負荷削減を目的としたEPR法(拡大生産者責任法)が施行されており、梱包材の種類やリサイクルの適合性に注意が必要です。以下のポイントを踏まえて、適切な梱包を心がけましょう。

軽量かつ強度のある梱包材を選ぶ
配送料を抑えるため、軽量でありながら衝撃に耐えられる段ボールや緩衝材を活用します。重量を抑えつつも保護性能を高めることが重要です。薄めの段ボールを利用する場合にはエアクッションを利用します。

再利用可能なエコ梱包を導入する
ドイツのEPR法やEU全体での環境規制を考慮し、リサイクル可能な梱包材や持続可能な素材を採用することで、現地の規制に対応できます。比較的ノンリサイクルの段ボールより軽めに作られていることが多く弊社でもよく利用しています。

商品ごとに最適な梱包をカスタマイズする
商品のサイズや形状に合わせた専用梱包の採用は難しいかもしれませんが、極力フィットするサイズだと良いでしょう。無駄なスペースを減らすことで、重量だけでなく、国際クーリエで利用される「容積重量」で差がつき梱包コストの削減となります。日本式の過剰包装も以前は喜ばれることもありましたが、直近では環境面に配慮していないのかと逆効果になることもあります。

現地の規制や文化を事前にリサーチする
配送先の国ごとの梱包に関する規制や消費者の期待を把握し、それに応じた対応を行うことが重要です。例えば、過剰包装が環境問題として批判される地域では、簡易で機能的な梱包が好まれる場合があります。避けにくいナイロン生地の袋+エアクッションで発送する手法もあります。

破損のリスク、返品・返金補償を事前に説明する
消費者に対し、海外配送には一定のリスクが伴うこと、また万が一に備えた返品・返金の補償サービスの有無を事前に説明することで、万が一のトラブル時にも信頼を損なわずに対応できます。

梱包は商品を保護して無傷で購入者へ届けるのが大前提ですが、このような戦略的な梱包もまた、顧客満足度向上とコスト効率化の両立につながります。

おわりに

海外から商品を購入してそれが届いた時、段ボール箱が潰れてひどい梱包状態だったり、中身の商品も雑に入れられていた、破損していた、などという経験をされている方もいるでしょう。

日本では「当たり前」とされる荷物の丁寧な扱いも、越境EC配送では適用されません。「商品が日本を出たら最後、日本のように丁寧には扱われない」と考えるくらいがちょうどいいです。スペインの実例が示すように、破損リスクを最小限に抑えるためには、梱包の質、ノウハウやテクニックは何度か実際に配送しながら向上させていくことが何より重要です。

自身での梱包に不安がある場合は、海外配送のプロに業務委託することも一つの手段です。国際物流の専門会社では商品の保管からインボイス作成、関税手続き、国際梱包、キャリア選択から発送までお任せすることができます。

越境EC事業者として、商品が無事に目的地に届くことは顧客満足度を左右する重要な要素です。梱包の工夫を通じて、世界中の消費者に「安心」と「信頼」を届けていきましょう!

参考文献:
7 de cada 10 españoles que compran online han recibido artículos dañados(NexoLog)

Corrugated Packaging Market Set for Steady Growth: E-Commerce and Sustainability Drive Demand for Innovative Solutions(newswires)

Writer 山田彰彦

山田 彰彦 代表取締役 越境ECコンサルタント eBay JAPAN創業メンバー、ヤフー株式会社コマース事業などを経て越境EC専門 ジェイグラブ株式会社を創業。越境EC歴24年。イーベイ・ジャパン公認コンサルタント、ジェトロ新輸出大国コンソーシアムEC専門家、中小企業庁「新しい担い手」越境EC委員も務める。

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